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DIRECTOR INTERVIEW監督スペシャルインタビュー

この時代に
『果てしなきスカーレット』
を生みだした、熱き制作秘話!

  • ■ スカーレットとハムレットLINK
  • ■ 過去と未来LINK
  • ■ キャラクターとキャスティングLINK
  • ■ ダンスと歌LINK
  • ■ ルックとアニメーションの可能性LINK
  • ■ スカーレットとハムレット

    復讐劇の元祖と言えば、やっぱりシェイクスピアの四大悲劇のひとつである『ハムレット』。それで今回、世界的にも有名なこの古典を物語のベースにしました。『ハムレット』の国王が自分を殺した相手を「許すな」と王子に言うのに対して、この物語ではまったく逆の「許せ」という言葉が投げかけられています。そのひと言で主人公のスカーレットは父親の仇を討とうとしながらも、『ハムレット』の王子以上に苦悩することにもなってしまう。そこが現代的な『ハムレット』の解釈にもなって、今の時代にあるべき復讐劇のひとつの答えにもなるかもしれないと思ったんです。時代によって解釈や表現が変わっていくというのも古典のひとつの面白さで、それこそ女性もハムレットを演じているんですよね。スカーレットという名前もハムレットの“レット” から取っていますが、スカーレット自体も響きとして情熱的で、西洋では強さを感じさせる名前だと海外の方も言われていました。そのスカーレットが復讐心で立ち上がる中、聖という青年と出会って、そこで何かが動いていく。そうやって果てしなく突き進んでいく主人公を描き たいという思いで、『果てしなきスカーレット』を作りました。

  • ■ 過去と未来

    過去の女性が、未来の男性と出会う─。今回、現代を生きる等身大の女の子ではなく、16世紀のデンマークの王女を主人公にするというのは設定としては初めての経験で、挑戦でもありました。ただ考えてみると構造としては『時をかける少女』と通じるところがあるんですよね。『時をかける少女』では真琴という女の子が未来から来た千昭という男の子と出会うわけですが、『果てしなきスカーレット』では中世を生きていたスカーレットが現代の日本の看護師である聖と出会う。その中で性別はもちろん、文化、価値観、生き方や生きる世界も違う同士がお互いを知ることによって、影響し合っていく。言えばスカーレットは現実主義者で、聖は理想主義者ということになりますが、そんなふたりの間で何か新しいものが芽生えることになる。そこにある種のバディものの楽しさや、物語というものの面白さもある気がします。何より僕自身、そういう物語や映画がもともと好きなんですよね。映画を観ること自体も異文化体験だと思いますが、今まで知らなかった人や物と出会うことは、人生の喜びのひとつでもある。この物語を通じて、皆さんにもそういう体験をしていたただけたらと思っています。

  • ■ キャラクターとキャスティング

    スカーレットは16世紀の王女で19歳の設定ですが、他の人とはまるで違う環境の中でいろいろな経験をして来ていて、現代で言うともっと年長の感覚だと思うんですね。そこを表現出来る人は誰だろうと考えたときに思いついたのが、芦田愛菜さんでした。奇しくもプレスコの収録が始まったときに芦田さんは19歳で、それでいて普通の19歳にはない経験値も感じさせて、そういう意味でもぴったりでしたね。聖の岡田将生さんは声の雰囲気からしても、実際にやり取りをしていても、非常に優しい方。そこが聖と響き合っていました。綺麗ごとに聞こえるかもしれない言葉も岡田さんが言うと、真実味や説得力がある。バディものとしても、おふたりの対比とバランスが素晴らしかったです。今回は『ハムレット』がベースということで、同作やシェイクスピアの舞台を経験されている、錚々たる方々に参加いただきました。岡田将生さんも市村正親さんもハムレットを務められていて、役所広司さんはハムレットと最後に剣で戦うレアティーズを演じたことがあるとおっしゃっていましたね。400年前の物語が今も生きづいていることを、皆さんの声とお芝居の力で感じていただけるんじゃないかと思います。

  • ■ ダンスと歌

    前作の『竜とそばかすの姫』のときにミュージカル的な要素が映画自体をさらに盛り上げて、ワクワクするものにしてくれるという経験をして、映画における歌とダンスの力を再確認しました。今回もシナリオを書いていく中で、スカーレットがもっと違う自分自身に目を向けるきっかけとして思いついたのが、渋谷でのダンスシーンです。未来のビジョンというのは『時をかける少女』でもやっていて、それによって人生の見方も変わるということがあると思いますが、同時にダンスは自由を表現して心を解放するものでもあるんですよね。皆さんにも同じような感覚で楽しんでいただけたら嬉しいです。

    聖が歌う曲は、当初は皆さんにも耳馴染みのある既存曲を使うことも考えましたが、映画のオリジナルとして音楽の岩崎太整さんと作っていきました。現代の歌ですが、それが死者の国の荒々しい光景の中で歌われたときに、まったく違う風に聞こえるんじゃないかと思って考えました。よくある愛の歌のように聴こえても、街中で口ずさむのとでは全然変わってくる。さまざまな場面で計5回この曲が登場しますが、同じ歌なのに全部意味合いも受け取り方も違って聴こえるんじゃないかと思います。

  • ■ ルックとアニメーションの可能性

    これまでの作品と『果てしなきスカーレット』で全然違うのが、ルック(=画面自体の視覚スタイル)です。今までの日本のアニメーションの一般的なルックとはだいぶ異なっているかと思いますが、既存のセル(=手描きのセル画)の表現では絶対に不可能な表現に挑戦していて、CGを使いながらも(観る人が)キャラクターの心情を受け止められる表現を意識しました。一方、『竜とそばかすの姫』でも現実とインターネットの世界で手法を分けていましたが、今回も中世の現実世界の方は今までどおりの手描きの手法で作っていて、そうしたところでも楽しんでいただけるんじゃないかと思います。

    これまでのルックを更新して、もっと新しいアニメーションを開発していこうという流れは、世界中で起こっているんですよね。今、日本のアニメーションが海外でも多くの方に観られている世界になっている中、これまでの日本の作品にはないほど大きくCGを使いながらも、「CG映画には見えない日本らしいアニメーション」が目指したところです。普通のアニメーション映画とは全然違うものを表現していながら、見やすさとしては馴染みのあるアニメーション、といい意味で変わらないものになっているかと思います。